材料を加熱した際にどのような変化が起こるのかを把握することは、研究開発や品質管理において重要です。TG測定(熱重量測定)は、その評価方法のひとつで、試料の重量変化を温度や時間の関数として測定し、熱分解や酸化、脱水などの現象を解析できます。本記事では、TG測定の原理や特徴、測定できる内容などをわかりやすく解説します。
TG測定とは?熱重量測定の基本原理
TG測定(Thermogravimetry:熱重量測定)は、試料を一定の速度で加熱・冷却、または一定温度で保持しながら重量変化を測定する熱分析手法です。英語ではTGA(Thermogravimetric Analysis)とも呼ばれます。材料は加熱されると、水分や溶媒の蒸発、化学反応によるガス発生、酸化や還元などさまざまな変化を起こします。
TG測定では、その際に発生する重量の増減を高精度にとらえることで、材料の組成や熱的特性を評価します。
TG測定装置の中心となるのが熱天秤です。試料を保持した状態で加熱し、試料重量に変化が生じると、その変化量を天秤機構によって検出します。
代表的な構造には上皿式、水平式、吊り下げ式があり、それぞれ測定目的や装置設計に応じて採用されています。
測定中は加熱炉内に設置された試料に対してプログラムされた温度制御が行われます。試料の重量が変化すると天秤のバランスが変化し、その変位を電気信号として検出することで重量変化を連続的に記録します。
同時に熱電対によって試料温度も測定されるため、どの温度でどの程度の重量変化が発生したかを把握できます。
また、測定時には窒素や空気などの雰囲気ガスを制御できるため、不活性雰囲気下での熱分解や酸化雰囲気下での燃焼挙動など、目的に応じた評価が可能です。
TG測定でわかることと評価できる材料特性
TG測定の最大の特徴は、試料の重量変化を定量的に評価できることです。そのため、材料の熱安定性や組成分析など幅広い用途で活用されています。水分・揮発成分の定量
まず代表的なのが水分や揮発成分の定量です。材料中に含まれる吸着水や結晶水、残留溶媒は加熱によって蒸発するため、その重量減少量から含有率を求められます。医薬品や食品、高分子材料などでは重要な評価項目です。熱分解挙動
高分子や樹脂材料は加熱によって分解し、ガス成分を放出します。TG曲線を解析することで、分解開始温度や分解終了温度、分解量を把握できるため、熱安定性の評価に利用されています。酸化・還元反応
金属材料や無機材料では、加熱中に酸素と反応して重量が増加する場合がありますが、逆に酸化物が還元されると重量が減少します。こうした反応の進行状況をTG測定によって確認できます。組成分析
組成分析も重要な用途のひとつです。複合材料や充填材入り樹脂では、加熱後に残る残渣量から無機フィラーや灰分の割合を求められます。品質管理や配合確認において有効な手法です。反応速度
反応速度解析では、異なる昇温速度で測定を行うことで、熱分解反応や酸化反応の速度論的解析が可能です。材料設計や寿命予測に役立てられています。測定可能な試料の種類
TG測定の対象となる試料は非常に幅広く、プラスチックやゴム、樹脂、セラミックス、ガラス、金属、複合材料、繊維、医薬品、食品などさまざまです。粉体だけではなく、液体やゲル状試料、ペースト状試料にも対応できるため、多くの産業分野で利用されています。
TG測定の活用事例とTG-DSC・TG-DTAとの違い
TG測定は研究開発から品質管理まで多岐にわたる場面で活用されています。TG測定の活用事例
代表的な例として、シュウ酸カルシウムの熱分解解析があります。シュウ酸カルシウム一水和物を加熱すると、脱水反応、一酸化炭素の放出、二酸化炭素の放出という3段階の重量減少が発生します。TG測定ではそれぞれの反応温度や重量減少率を定量的に評価できるため、熱分解機構の解明に役立ちます。ゴム材料の評価も代表的な用途です。タイヤなどに使用されるSBR(スチレンブタジエンゴム)にはカーボンブラックが添加されています。
窒素雰囲気中で加熱してゴム成分を分解した後、空気雰囲気へ切り替えることでカーボンブラックを燃焼できます。
この重量変化からカーボンブラック含有量を定量できます。樹脂材料のフィラー分析も広く行われています。
たとえばエポキシ樹脂に石英が添加されている場合、加熱によって有機成分のみが分解し、石英は残渣として残ります。そのため残留重量から石英の添加量を求めることが可能です。
TG-DSC・TG-DTAとの違い
近年ではTG単独測定だけではなく、TG-DSCやTG-DTAと呼ばれる同時熱分析装置も普及しています。TG-DSCは熱重量測定と示差走査熱量測定(DSC)を同時に実施できる装置です。重量変化に加えて吸熱・発熱現象も同時に測定できるため、熱分解と融解、結晶化などを一度の測定で評価できます。
一方、TG-DTAはTGと示差熱分析(DTA)を組み合わせた装置です。試料と基準物質との温度差を測定しながら重量変化を観察するため、相転移や反応熱を把握できます。
たとえば、樹脂材料の評価では重量減少が発生した温度と発熱反応が発生した温度を同時に確認できるため、単独のTG測定では得られない詳細な解析が可能です。
このような複合的な情報取得ができることから、材料開発の現場ではSTA(Simultaneous Thermal Analysis)装置の導入が進んでいます。