材料の融解や結晶化、ガラス転移、反応熱などを評価するために活用されるDSC(示差走査熱量計)は、研究開発から品質管理まで幅広い分野で利用されるものです。近年は測定精度だけではなく、自動化や操作性、データ解析機能も重視されるようになっています。本記事では、DSCの導入を検討している方に向けて、おすすめの製品を紹介します。
DSCとは
DSC(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量測定法)は、試料を加熱または冷却した際に生じる熱の出入りを測定する熱分析手法です。試料と基準物質を同じ温度条件下で制御し、その際に発生する熱量差を測定することで、物質の熱的特性を評価します。DSCは熱分析装置の中でもとくに利用頻度が高く、高分子材料や医薬品、食品、金属材料など幅広い分野で活用されています。測定によって得られるデータはグラフとして表示され、温度変化にともなう吸熱反応や発熱反応を視覚的に確認できます。
DSCにはおもに「熱流束型DSC」と「入力補償型DSC」の2種類があります。熱流束型は試料と基準物質の温度差を測定して熱量を求める方式で、現在広く普及しています。
一方、入力補償型は試料と基準物質の温度を一定に保つために必要なエネルギー差を測定する方式で、応答性に優れている点が特徴です。用途や測定対象によって最適な方式が選択されています。
また、DSCは微量の試料でも測定が可能であり、短時間で熱的特性を評価できることから、研究開発だけではなく製造工程の品質管理にも活用されています。近年では高感度化や自動化が進み、多数のサンプルを連続測定できる装置も登場しています。
DSCでわかること
DSCの最大の特徴は、材料の熱的な変化を定量的に評価できることです。測定結果からはさまざまな熱イベントを確認でき、材料の特性評価や品質判定に役立ちます。融点
代表的な測定項目のひとつが融点です。物質が固体から液体へ変化する際には吸熱反応が発生するため、DSCではその温度と熱量を測定できます。融点の測定は材料の純度確認や品質評価に利用されており、樹脂や金属、医薬品など幅広い分野で重要な指標となっています。
ガラス転移温度(Tg)
高分子材料の評価に欠かせないのがガラス転移温度(Tg)の測定です。ガラス転移温度とは、樹脂が硬く脆い状態から柔軟な状態へ変化する温度を指します。製品の耐熱性や使用環境を検討するうえで重要なデータであり、自動車部品や電子部品、包装材料などの設計に活用されています。
結晶化温度の評価
結晶化温度の評価もDSCの重要な用途です。結晶化は材料の強度や耐熱性、加工性に大きく影響するため、樹脂やフィルムの製造条件を最適化する際に利用されます。加熱時だけではなく冷却時の結晶化挙動も評価できるため、製造工程の改善にも役立ちます。
融解熱や結晶化熱などのエンタルピー変化
DSCでは融解熱や結晶化熱などのエンタルピー変化を測定できます。これにより結晶化度の算出や反応進行度の評価が可能となります。たとえば、同じ樹脂材料であっても成形条件が異なれば結晶化度が変化し、最終製品の性能にも影響を与えます。DSCはこうした違いを数値として評価できるため、品質管理において非常に有効です。
比熱容量
DSCは比熱容量の測定にも利用されます。比熱容量は材料がどれだけ熱を蓄えることができるかを示す指標であり、電子機器や蓄電池材料、断熱材などの開発において重要な評価項目です。DSCによる測定データは、材料設計やシミュレーションにも活用されています。
DSCの活用分野と導入メリット
DSCは幅広い業界で利用されており、材料開発や品質管理を支える重要な分析技術となっています。高分子・樹脂分野
高分子・樹脂分野では、新材料開発や製造条件の最適化に活用されています。ガラス転移温度や融点、結晶化温度を測定することで、耐熱性や加工性を評価できます。自動車部品や家電製品、包装材などの開発では欠かせない分析手法です。
医薬品分野
医薬品分野では、有効成分の結晶多形や安定性評価に利用されています。同じ化学組成であっても結晶構造が異なると溶解性や保存安定性が変化するため、DSCによる熱分析が重要です。また、製剤開発や品質試験にも広く活用されています。
食品分野
食品分野では、油脂やチョコレートなどの融解特性評価に利用されています。融解温度や結晶化挙動を把握することで、食感や保存性の向上につなげることが可能です。品質の均一化や製造条件の管理にも貢献しています。
リチウムイオン電池や次世代電池材料の研究開発
近年では、リチウムイオン電池や次世代電池材料の研究開発でもDSCの活用が進んでいます。電池材料の熱安定性や反応熱を評価することで、安全性向上や高性能化に役立てられています。DSCを導入するメリット
DSCを導入するメリットとしては、高感度かつ定量的な評価が可能であることが挙げられます。少量の試料で測定できるため、貴重な材料の評価にも適しています。また、測定時間が比較的短く、再現性の高いデータを取得できるため、研究開発の効率向上や品質管理の精度向上に貢献します。さらに、TGAやDMAなどほかの熱分析手法と組み合わせることで、材料特性をより多角的に解析できる点も大きな魅力です。
DSCを選ぶ際に確認したいポイント
DSCを選定する際は、単に測定温度範囲や価格だけで比較するのではなく、測定目的に適した性能を備えているかを確認することが重要です。たとえば、高分子材料のガラス転移や結晶化挙動を詳細に解析したい場合には、高感度かつベースラインの安定性に優れた機種が適しています。一方で、製造現場における品質管理用途では、再現性や操作の容易さ、自動測定機能の有無などが重要な評価項目となります。また、冷却システムやオートサンプラーなどのオプション機能も確認しておきたいポイントです。
測定試料数が多い場合は自動測定機能が作業効率向上に大きく貢献します。さらに、解析ソフトウェアの使いやすさやサポート体制も運用面に大きく影響するため、導入前には総合的な視点で比較検討することが大切です。
DSCの測定原理とほかの熱分析手法との違い
DSCは、試料と基準物質を同じ条件で加熱・冷却し、その際に発生する熱量の差を測定することで熱的変化を捉える分析手法です。たとえば、物質が融解するときには吸熱反応が発生し、結晶化するときには発熱反応が生じます。DSCではこうした熱の出入りを高感度に検出し、温度と熱量の関係をグラフとして可視化できます。そのため、材料内部で起きている相転移や化学反応を定量的に評価できる点が大きな特徴です。
また、熱分析にはDSC以外にもさまざまな手法があります。代表的なものとして熱重量分析(TGA)があり、こちらは温度変化にともなう試料重量の変化を測定する装置です。
DSCが熱量変化を評価するのに対し、TGAは分解や蒸発による質量変化を評価するため、取得できる情報が異なります。さらに、動的粘弾性測定(DMA)は材料の剛性や粘弾性特性を評価する手法であり、高分子材料の機械特性解析に用いられます。
これらの手法を組み合わせることで、材料の熱的特性だけでなく構造変化や物性変化まで総合的に把握できるようになります。研究開発の現場では、DSCを中心に複数の分析手法を活用しながら材料評価を行うケースが増えています。
DSCvesta2(リガク)

引用元:https://rigaku.com/ja/products/thermal-analysis/dsc/dscvesta2
| 会社名 | リガク・ホールディングス株式会社 |
|---|---|
| 住所 | 東京都昭島市松原町3-9-12 |
| TEL | 042-545-8111 |
業界初とされる自己診断機能「vestaeye®」を搭載している点も大きな特徴です。装置内部の状態を監視し、異常や潜在的な問題を早期に検知することで、安定した測定環境の維持に貢献します。
また、オートサンプルチェンジャー(ASC)に対応しており、最大52試料のセットと連続測定が可能です。多数の試料を扱う研究機関や品質管理部門では、無人運転による作業効率の向上が期待できます。
さらに、複数の冷却ユニットや試料観察ユニットとの組み合わせにも対応しているため、用途に応じて柔軟にシステムを拡張できる点も魅力です。測定レンジの拡大や高機能な温度ホールド制御、多彩なガス制御オプションなども備えており、材料開発の高度な解析ニーズに応えるDSCとして注目されています。
DSC-60 Plusシリーズ(島津製作所)
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引用元:https://www.an.shimadzu.co.jp/products/thermal-analysis/differential-scanning-calorimeters/dsc-60-plus-series/index.html
| 会社名 | 株式会社 島津製作所 |
|---|---|
| 住所 | 京都市中京区西ノ京桑原町1番地 |
| TEL | 075-823-1111(代表) |
ノイズレベルも低く、微小な熱変化の検出が可能なため、ガラス転移や結晶化挙動などの評価に適しています。とくにゴムやプラスチックなどの高分子材料では、低温域から高温域にわたる複雑な熱挙動を測定する必要があります。
DSC-60 Plusシリーズは広い温度範囲で安定した測定が可能であり、材料特性の評価や品質管理に役立ちます。さらに、液体窒素を利用した低温測定にも対応しており、常温以下の熱分析を容易に行える点も魅力です。オプションとして温度変調DSC(TM-DSC)を利用できるため、比熱容量の測定や重なり合った熱イベントの分離解析にも対応可能です。
また、オートサンプラーを搭載した「DSC-60A Plus」も用意されており、連続測定の効率化を図ることができます。ソフトウェアも測定から解析まで一貫して操作できる設計となっており、初心者でも扱いやすいシステムです。
NEXTA® DSCシリーズ(日立ハイテク)

引用元:https://www.hitachi-hightech.com/jp/ja/products/analytical-systems/thermal-analysis/nexta-dsc.html
| 会社名 | 株式会社 日立ハイテク |
|---|---|
| 住所 | 東京都港区虎ノ門一丁目17番1号 虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー |
| TEL | (03)3504-7111 |
本シリーズでは、従来機から受け継がれた高感度性能に加え、「Real View®」機能の温度範囲拡大や温度変調測定への対応が図られています。温度変調技術を活用することで、比熱容量の測定や複雑な熱挙動の解析をより詳細に行うことが可能です。
とくに材料開発においては、従来のDSC測定だけでは把握しにくい現象の解析に役立ちます。また、中心熱流方式のセンサーを採用することで、世界トップレベルとされるベースライン再現性を実現しています。
高い再現性は測定結果の信頼性向上につながるため、研究データの比較や品質保証において大きなメリットとなります。さらに、安全性にも配慮した設計が施されており、日常的な運用のしやすさも考慮されています。
研究機関だけではなく、製造業の品質管理部門においても導入しやすく、精度と操作性を重視するユーザーに適したDSCシリーズといえるでしょう。
DSC9(パーキンエルマー合同会社)

引用元:https://www.perkinelmer.co.jp/prod/te/dsc9/index.html
| 会社名 | パーキンエルマー合同会社 |
|---|---|
| 住所 | 神奈川県横浜市神奈川区新浦島町1-1-32 アクアリアタワー横浜2階 |
| TEL | 045-522-7821 |
パーキンエルマーはDSCの歴史と深い関わりをもつメーカーであり、そのノウハウがDSC9にも反映されています。DSC9の大きな特長は、−70〜750℃までの広い温度範囲に対応している点です。
樹脂やゴム、医薬品、食品、金属材料など、多様なサンプルの熱特性評価に活用できます。また、ダイレクト温度コントロールセンサーを採用することで、温度制御の精度と再現性を高めており、信頼性の高い測定結果を得られる点も魅力です。
さらに、最大100℃/minの高速昇温・冷却に対応しているため、測定時間の短縮にも貢献します。タッチスクリーンによる直感的な操作性や、堅牢で長寿命なファーネス設計も評価されており、日常的な測定業務を効率化したい企業や研究機関に適したモデルといえるでしょう。
温度・熱量の精度向上にも注力されており、材料開発や品質保証の現場で安定した分析を実現します。
熱分析システム DSC3(メトラー・トレド株式会社)

引用元:https://www.mt.com/jp/ja/home/products/Laboratory_Analytics_Browse/TA_Family_Browse/ta-instruments/thermal-analysis-system-DSC-3.html?_gl=1*130qp3m*_up*MQ..&gclid=CjwKCAjw1NK4BhAwEiwAVUHPUJWteD9C3muK5vYX_RMoqBR-R56vF-wAg6JMpA3-lWMR16ot0v_dWBoCcK8QAvD_BwE
| 会社名 | メトラー・トレド株式会社 |
|---|
同社の熱分析シリーズは、多様な測定ニーズに対応できる柔軟性の高さが特徴です。DSC3は、高感度な熱流測定によって融解、結晶化、ガラス転移、硬化反応などの熱的挙動を高精度に評価できます。
わずかな熱変化も検出しやすいため、高機能材料や先端材料の研究開発に適しています。また、比熱測定や温度変調DSCなどの高度な解析にも対応しており、より詳細な熱特性評価を行える点が強みです。
さらに、測定データの再現性や安定性に優れていることから、品質保証用途にも適しています。直感的なソフトウェア環境により測定条件の設定やデータ解析を効率的に行えるほか、ほかの分析機器との連携によって複合的な評価も可能です。
材料開発のスピード向上や製品品質の安定化を目指す企業にとって、有力な選択肢となるでしょう。
DSC 300 Caliris Classic(NETZSCH)

引用元:https://analyzing-testing.netzsch.com/ja/zhi-pin/shi-chai-zou-cha-re-liang-ji-dsc-shi-chai-re-fen-xi-qi-dta/DSC-300-caliris-classic
| 会社名 | NETZSCH Japan株式会社 |
|---|---|
| 住所 | 神奈川県横浜市神奈川区守屋町3-9-13 |
| TEL | 045-453-1962 |
初心者から経験豊富な分析担当者まで扱いやすい設計となっており、さまざまな業界で導入が進んでいます。本製品は、−170〜600℃までの広い温度範囲に対応し、0.001K/minから100K/minまでの昇温・冷却速度を設定できます。
そのため、ポリマーや医薬品、食品、化学材料など多様なサンプルの熱挙動を詳細に解析できます。また、エンタルピー精度や温度精度にも優れており、再現性の高い測定結果を得られる点も魅力です。
加えて、コンパクトな設計により設置スペースを抑えられるほか、自動評価機能やデータ管理機能を備えたソフトウェアによって測定業務の効率化を図れます。
オプションのオートサンプラーにも対応しているため、多数のサンプルを連続測定する運用にも適しています。品質管理の効率向上と測定精度の両立を目指す企業におすすめのDSCです。